はなことば南のブログ
指先の記憶 ~思い出をつむぐピアノの調べ~
多くの人々が行き交う当ホームのラウンジには、一台の電子ピアノがあります。
ある時、ご家族から「若いころは幼稚園で子どもたちにピアノを弾いていた」と、うかがっていたお客様(98歳・女性)を、このピアノの前にご案内しました。
席に着いたこの方は一瞬戸惑われたのち、おもむろに両手を鍵盤に乗せ、ゆっくりとメロディを奏ではじめました。
耳を澄ますと、それは『荒城の月』。
心に沁みる旋律に、通りかかったほかのお客様やスタッフは大変驚き、しばし足をとめてじっと聴き入りました。
演奏が終わると、一斉に送られた拍手…。
長い年月を経ても、指先に記憶された“あのとき”のメロディは、人々の感動を誘ったのでした。